プラシボ効果(思い込み)
医学の世界ではプラシボ効果というものが必ずついて回ります。モルヒネについて有名な研究があります。手術をした直後の患者さん162人に痛みを抑える目的でモルヒネを投与したところ、75%の患者さんが「充分に痛みが取れた」と答えたのです。次に同じ162人に「モルヒネを使う」と言いながら単なる生理食塩水を投与した。その結果は35%の人が「十分に痛みが取れた」と答えたのです。
プラシボ効果とは、医学的な作用がないにもかかわらず、受ける人が「効果がある」と信じることによって生まれる治療作用のことです。
信じるという事と近いかもしれませんが、思い込みが痛みの予後を左右することがあるという例を紹介します。
1996年に「ランセット」詩に掲載されたシュラッダーという脳外科医たちの研究です。旧ソビエトから独立したばかりの国、リトアニアにおいて「社会的常識や文化が痛みにどの程度影響するか」というテーマで調査を行ったものです。
当時のリトアニアでは、ほとんどの国民は自動車保険に加入しておらず、しかも「むち打ち」という病気があることを知らない人がほとんどで、医者も「むち打ち」を念頭に置いて診察をしていないという状況でした。
これを利用して「むち打ち」を認知していない国では交通事故の後に頭痛や首の痛みが長引く人はどれくらいいるのだろう、という調査をしたのです。
二つのグループに分け、1つのグループは1~3年前に交通事故で後方から追突された経験のある202人、もう一方のグループは年齢や性別などを一致させた人たちで、交通事故にあったことがないという202人です。結果は驚くべきことに頭部痛や頭痛の割合は二つのグループの間で差がなかったのです。もちろん事故直後には半分近くの人が首の痛みや頭痛を訴えたのですが、痛みの持続期間が極端に短いことが明らかになりました。
ここから導き出されることの一つは、我々は「こうなるはずだ」という思い込みによって痛みを長引かせることがあるという事です。これは負の効果という事でノセボ効果と呼ばれています。
もう一つは、利益によって痛みの訴えが長引いているという可能性です。
自動車保険に入っていないリトアニアの人にとっては、痛みを訴えても何の利益にもならないのですが、自動車保険に入っている国では痛みを訴えなかったら損をするという気持ちが働くのは否めません。さらに痛みを訴えることで「周りから注意を向けてもらえる」という心理的な利益もあるかもしれません。
痛みと心の問題は複雑です。
私はよく言うのですが「フォーカスするところを変えてみては?」
痛いというところに意識を向けると痛みがどんなに小さな痛みでも「痛い」というのに変わりはないと思ってしまいます。
しかし例えば「今日の痛みは昨日より1%楽」とほんの少しでも楽になった、というところにフォーカスすれば、たとえ1%ずつの変化だとしてもどんどん良くなっていくものです。
心の持ちようだけではないですが、痛みと心は深い関係にあると思っています。
徳島整体院